物質//世界/Physical World

2021
物質-世界(Physical World)

(1−3)
「物質」とは,自然物から人工物まで全てを指す.これらのほとんどは人が扱いやすいように分類されている.ただ「物」であっても,人の役に立つ場合には「材料」,より扱いやすく加工された場合には「工業製品」,不要になれば「廃棄物」,人にやその周辺に害をなすとみなされれば「汚染物」と呼ばれる.一般的にこのような命名と平行して,分類し解釈を進めることは科学技術や文化人類学の発展を促し,人であれば,私自身も,その恩恵を享受している.








(2−3)
あれとこれは何が違うのか?折に触れて生じる他愛無い疑問を,忙しさと生来の怠惰にまかせて無視するようになった.その歴史を慎重になぞってみれば,古い慣習を変えようとしたもの,それまでの粗い近似の精度をあげようとしたもの,などさまざまにアプローチがあったことがわかるはずなのに.かといって自分は,疑問を掲げる活動家になりたいわけではない.

それでも,疑問を無視し続けた結果として,いろいろなイベントを安直に単一の解へと結びつけてしまいがちになり,快適さと同時に窮屈さを見とめるようになった.例えば,パラレルに発生し得るイベント同士は,観察者がそれを認識できないというだけで,片方のあり方は否定されるのだろうか.自己のあり方としていくつもの解をパラレルに所有することはありえないことなのか.












(3−3)
世の流れに少し逆らってみようかなと思い,物質と物質との境界を踏みしめ己の目で確かめるように定義することを試みた.考え事を進めるために森は最適な場所の一つだ.物質からなる自分自身をも確かめ直すように,固まった思考をほどきながら,水辺へ向けて足を進めた.

しばらく静かに進んでみると,どれかであってどれでもない眺めが現れた.